vol39 負けず嫌い
僕は負けず嫌いだ。
だけど、ちょっと人と性質が違うかもしれない。
「どうせ、これできないですよね」
前職では人事にいた。全部署の評価会議に、事務局として同席していた。
そこに、どうしても苦手な女性役員がいた。
仕事ができる人だった。陰ながら、とても尊敬していた。
けど我々事務局には、いつも嫌みなことを言ってくる。
どうせ、これできないですよね。
悔しいから、できますよ、と言って、希望よりも早く出した。
それでも態度は変わらなかった。
悔しい。
そこで僕は、その人と仲良くなることにした
普通なら、もっと結果で見返してやる、と思うところなのかもしれない。
僕が思ったのは、仲良くなればそんな態度を取らなくなるんじゃないか、だった。
社内報を読んだ。社内Slackでその人が発信している投稿を遡って読み漁った。外部に向けて出している記事も、名前で検索して調べまくった。
そしてSlackでDMを送った。
いつもお世話になっています。1on1したいです!
4年前の日記
当時の日記が残っている。2022年7月26日。
「人事のお二人も見といてくださいね。」言い方、ありがとうもない。正直イライラしたけどむこうの言い分もわかる。今度〇〇さんと二人で話せる機会もある。どうしたらお互いに気持ちよく働けるか。それが問題だ。楽しもう。あの場でExcel直した俺えらい
イライラした、と書いた数行あとに、どうしたらお互いに気持ちよく働けるか、と書いてある。
矛先が、相手ではなく関係のほうに向いている。
1on1の日
ちょうど4年前の今日、8月24日。
拍子抜けするくらい、優しかった。
嬉しい、ありがとう。
そう言われて、そのあとポロっとこぼした。
私、怖いのかな。最近、自分の部門の子たちともあんまり話せてないなって思って。若手に自分から絡みに行くのも、あれだし。
怖いと思っていた人が、怖がられていることを気にしていた。
嫌みだと思っていたものの何割かは、僕の側の身構えで、残りの何割かは、向こうの側の遠慮だったのかもしれない。
お互い、動けずにいただけだった。
動いたのは、悔しかった僕のほうだった。
その日の日記にはこう書いてある。
〇〇さんと1on1。めっちゃ優しい。5年目は付加価値、もっとできることあるよ。
それから、その人の態度は変わった気がする。僕への、というより、人事への態度が。
最終出社の日
半年後、僕は会社を辞めた。
最終出社の日、その人とランチをした。4階まで一緒に弁当を買いに行った。
僕が福岡でBARをやることまで、知ってくれていた。
辞めてもつながり、大事。これからが挑戦。いいじゃん。
いちばん苦手だった人と、最後にそんな話をして会社を出た。
これが、僕の負けず嫌いだ。